俳句の作り方 実梅の俳句
実梅とり少年の声大人びて 伊庭直子いばなおこ
実梅が夏の季語。
梅の花は2月頃咲き、『梅の実は5月から6月に急速に育つ。
熟す前の硬くて青い実を「青梅」と呼ぶ。
葉の色にまぎれがちながら、梅雨時に雨粒をはじいている様子はみずみずしい。』
(角川書店編 俳句歳時記 夏より引用)
実梅とり少年の声大人びて
この句はネット公募のHAIKU日本で佳作を獲った作品です。
お向かいで梅の実を収穫しているようです。
おばあさんと男性の声が聞こえます。
近寄ってみると大人の男の声だと思ったのは17歳くらいの少年でした。
おばあさんが幼児を抱えながら籠を持っています。
少年が「これも獲ろう」と実をもいでいます。
つぎつぎと実を籠に入れています。
なごやかな光景です。
実梅とり少年の声大人びて
青梅の著名人の俳句を紹介します。
青梅の臀うつくしくそろひけり 室生犀星むろうさいせい
あおうめのしりうつくしくそろいけり
収穫した青梅が籠の中にいっぱい入っています。
実のお尻は、それこそみずみずしく青く輝いています。
粒ぞろいの立派な実です。
室生犀星についてお話します。
1889年明治22年生まれ。
1966年昭和37年没。77歳。
詩人・小説家。
私生児として生まれました。
実の両親に一度も会えなかったのです。
そんな生い立ちは、犀星の文学に深い影を落としました。
夏の日の匹婦の腹に生まれけり(50歳の作)
匹婦ひっぷとは道理をわきまえぬ卑しい女の事です。
ところで13歳で裁判所の給仕として就職します。
上司たちが俳人だったので手ほどきをうけることができました。
句会に出席したり新聞に投句を始めます。
掲載されるようになり、その後、詩集を出版し小説を書き始めます。
「性に目覚める頃」「あにいもうと」などの小説が有名です。
あくまで私の主観ですが、室生犀星の句より伊庭さんの句の方が、素晴らしいと思います。